要旨
森の幼稚園や森の保育園の原点であるフレーベル(1782-1852)のキンダーガルテンについてお話します。キンダーガルテンの保育テーマは「生命を伝える」です。人間性(愛・感謝・信頼・素直)を育てるには小動物や植物とのかかわりの中で「思いやり」や「やさしさ」を体験し、生命を考える中で「人間だけが生きているのではないこと」、「生命は助け合い、支えあって生きていると」を伝える必要があります。したがって、キンダーガルテンは里山の傍らに作られたり、近くの森に出かけていくことで自然とかかわる保育をしていました。
植物は自然のままだと太陽に向かってまっすぐ育つのに、ひとたび、人の手にわたると盆栽のように歪められてしまう。だから「人の子の教育は人の手にわたしてはならない」と考え、ルソー(1712-1778)は「自然による教育」を提唱しました。彼の「自然による教育」を引き継いで、フレーベルは「合自然性」を幼児教育の根底に据えて自由保育
(合自然保育)
をしたのです。
自然保育は海や山などの自然に恵まれていないとできないのではありません。自然の示す節理をガイドラインとし、不自然さに気づく保育者がこどもの視点で活動すればよいのです。子どもたちに生命 (いのち)
を伝える私たちが自然を通した保育をすることこそ、まわりを歪めても気づかない人間性の欠如した人たちの再教育にもなるのです。